2017.06.27 真の美味しさ
スポーツの楽しさをお伝えするATHLEADブログ。
こんにちは、シェフの阿川です。
20年ほど食の仕事に携わってきましたが、ここ数年、周りの環境や流行などにも目を配ると考えさせられることが多くなってきました。
特に"美味しさ”というものが変化してるのか、間違ってしまってるのかということです。
有機農法などで、栄養素と味のしっかりした野菜も出回るようになりましたが、一般的に食べられる食材ではなく、プレミアム感を付加価値としてつけた商業的な意味合いの方が強く感じます。
本来の野菜の栄養素が詰まっていれば力強い味があります。
子供の頃嫌々食べさせられた味ですね。
そんな野菜は一般の食卓からは消えているのが現状です。
原因は色々あるでしょうが、季節を無視した生産やそれに伴う品種改良、メディア等での偏った情報の氾濫は影響が大きいと思います。
ここ数年、フルーツトマトがもてはやされるようになり、糖度を上げ酸味を抑える風潮がもてはやされてますが、それはトマトの美味しさなのか?
ここ10年位の事でしょうか、普通にスーパーで売られてるトマトが甘味、酸味すら感じない野菜になったと感じてきました。
かつてはとても美味しいトマトと認識していた品種までも!
酸味を減らす、ありがた迷惑な品種改良の結果だったり、完熟する前に収穫して生産量を無理に上げている事も原因ですが、肥沃な土地が減った為に水耕栽培で作った物が多くなってることも原因のようです。
フルーツトマトに近い物の1つに塩トマトというのがあります。
フルーツトマトより酸味もあり、オリーブ油との相性も抜群です。
1月から6月くらいまでしか生産されないトマトなのですが、サラダで食べるのにも焼いてもトマト本来の味があると思うので、お店で使っています。
このトマトは塩田の跡地で栽培しているのですが、海風が届く場所で栽培しているところもあります。
自然の塩はミネラルも豊富なので、栄養素もたっぷりのはずです。
トマトのリコピンが注目されてますが、リコピンが多く含まれてるのは皮の部分です。
抗酸化作用に良いとされてますね!
湯むきしてしまってはリコピンを捨ててるのと同じなので、皮ごと食べる事をお勧めします。
ミニトマトはよりリコピンがとりやすく、刻むかカットしてオリーブ油ととることの方が体内に吸収されやすいとの事です。
ところで、私の美味しさという味覚のベースは何かというとやはり母親の料理です。
季節の旬の食材を使って、あれこれと手を加えない料理だったり、時には時間をかけて味を重ね合わせた料理などバラエティに富んでいたと思います。
ただ子供の頃、高校を卒業する頃までは母が特に料理の上手な人だったとは考えた事もなく、むしろ外食や友人達ととるジャンクな料理の方が好きでした。
自分で料理をする様になっても、母の料理の深さには気付けずにいました。
自分の料理が足し算からムダを省く引き算の料理に変わってきた頃に、母は料理上手な人だったんだと実感する様になりました。
料理の基本は素材を食べ易く、火の通りが良い大きさに切って塩、醤油、味噌などの調味料を水や油で加熱する。
ただそれだけで味のしっかりとした美味しい料理になります。
高校を卒業するまで母は必ず煮干しから出汁をとり、インスタントの本だしや味の素は使っていませんでした。
米も胚芽米で白米を食べる機会は少なかったです。
当時は薄い味と感じて不満でしたが、素材を味あわせる為でもあり、しっかりとした身体を育てる為であったのでしょう。
今現在、巷に出回ってる食材に力強さを感じないのは栄養素が詰まってないのではないか、単純な調理法では商品としての美味しさにならないのではないかという疑問が生まれ、機会があれば生産者と話すようになりました。
キッカケの1つに外国人の問いかけがありました。
「日本に来て3日で顔が浮腫むようになった」と言われました。
なんで、最初から最後まで甘い料理が出てくるのかと。
しかも、化学調味料が入ってるから顔が浮腫むというのです。
全く不意をつかれる答えでした。
それから、我々の美味しさの概念がねじ曲がってるのではと考えるようになりました。
先に問いかけてきた外国人がアメリカ人だったので、そこまで毒されてるのかとショックも大きかったです。
次回から、自分の味覚も含めて食材自体の味そのものを考えていきたいと思います。